自動車輸出物語

三菱商事自動車部OBの海外活動

自動車輸出物語タイ03.jpg1962年出張時。タイバンコックとサラブリを結ぶ幹線道路をいすゞトラックが疾走する。当時は、雨期になると道路が冠水し4時間も掛った。

自動車輸出物語 000-082



記載日付:2010年1月30日
ライター:鈴木富司
番号:000-082
タイトル:中国自動車産業発展の物語 

 中国が世界一の自動車消費国になるのは、漠然と分かっていたことでした。
しかし、実際にそうなったと報じられると、あのやりとりは何だったのだと
今から25〜26年前の滑稽な会議の模様が思いだされます。

 中国から、30件もの自動車製造に関する技術提携の呼びかけを受けて、
中国に何度も出張をして調査をしたり、話し合いを持った物語は、21話や
54話で書きましたが、福建省福州市のプロジェクトは、その中でも一番
具体的な話でした。確か、福州市汽車公司という名前のこぢんまりした
自動車会社との交渉でした。

 今から考えると、交渉というよりは、中国側は会議を通じて日本の技術を習得
したかったのだと思います。日本側からは改造するとしたら、こんなレイアウトに
なるでしょうね、ということで図面を出したり、技術者もこちらの費用で出張して
何日も不毛な議論に時間を費やしたのでした。

 ある時、中国側が突然自動車生産に必要な鉄鋼の重さを知りたいと言い出した
のです。日本側の技術者は、「今は、技術提携をするとしたら工場をどう改造して
どんな車種を何台つくるかの議論をしている時だ」つまり、「そんな話は後でしょう」
ということで、相手にはしません。しかし、相手は泣きそうな位い真剣に訴える
のです。しかし、何故そう質問をしているかは言いません。言えない理由がある
ように感じましたので、後日の相談ということにして、会議が終了したあとに
非公式に調査をすることにしたのです。

 理由が分かりました。「国家計画経済」により、鉄鋼を何トン使うかを上部機関を
通じて国家に報告をしなければいけないのだそうです。それも、国家機密である
から、報告することを外国人に漏らしたらえらいことになると怖れたのだと想像
されました。三菱自工の技術者に「数字を出してやってよ」と頼んでも、
「何を言うんですか」、「自動車に使う鉄鋼と言っても、ボデーの鉄鋼ですか、
ここでエンジンまで造るという前提なのですか」「ボデーの鉄板だけでも20種類も
あるんですよ」「何を何台つくるかも決まっていないのに、そんなアホな数字を
纏める馬鹿な仕事はできません」って取り合ってくれません。自動車を生産する
国家の計画に、鉄鋼の種類も明示しないで、ただ何トンと書類に書かせるという
「国家計画経済」の実態を知り驚いた記憶があります。

 もっと、深刻な中国側の苦悩を垣間見ることもありました。工場のレイアウトを
論じている時、不思議なことが起こりました。三菱自工が提示したレイアウトを
中国側が気に入らないと言うのです。その頃の三菱自工の生産技術は、世界一という
自負心もありましたし、中国側から文句を言われる筋はないと「理由を言ってくれ」
と長いこと押し問答が続きました。全く議論がかみ合わないのです。何かあるなと
感じて、その場は何とか収めて、また別ルートで事情を探ったのです。公式の
会議では言えない事情が分かりました。

 国家が指導する工場を造る時のマニュアルがあり、「工場内の道路は直線でなければ
ならない」と規定していて、そのマニュアルに従わねばならないと言う事情がある
ことが判明しました。中国側の技術者も三菱の技術者が説明するレイアウトの方が
合理的であり、既存の建物を活かすには、そうせざるを得ないのは充分理解するが
国家の規定には逆らえないし、国家の規定を批判するようなことは言えないから、
延々と議論が何時間も続いたのでした。法律による遵守せねばならない規定なのか、
単なるガイドラインとしての規定なのかもはっきりしない規定だったので担当ベース
では、どうにもならなかったのです。結論は忘れましたが、上層部に働きかけて
解決したと思います。

 中国側の視察団が、日本にやってきた時のことも思い出されます。品川のホテルで
彼らを部屋に送り届けてから、レストランで一杯やっていましたら、副工場長が
ロビーにでてきて、片隅のテーブルで、一生懸命レポートを書いていました。
真剣そのものでした。二人部屋が窮屈なので分かれて仕事をしていたのだと
思います。声を掛けては邪魔になると思って、1960年代に、われわれ日本人が
寝食を忘れてレポートを書いていたことを思い出しながら、見守ったのを昨日の
ことのように思い出します。

 それから、更に時代を経て、福州市の汽車公司の幹部は、現在どうなっているの
でしょう。ネットで検索したら、2006年の記事で、「三菱自動車は、
東南汽車(福建)工業有限公司に対する25%の出資手続きが完了したことを発表した。」
と出ていました。もう、私の思い出は、全く遠い昔の歴史物語になっていますね。

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 今年は昨年より忙しくなりそうです。仲間とのプロジェクトが目白押しです。
それに、新しく勉強を始めようと、iPhoneアプリ開発の研修夜学に通うことに
しました。わくわくするやら、若い人にどこまでついていけるやら心配をして
おります。iPadも発表になりましたし、これは早死にはできないなって感じ
です。

 武道和良久にも熱が入っています。汗びっしょりで、樫の木剣を振り回し
組稽古をやっています。

鈴木富司
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