自動車輸出物語 

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記載日付:2004年6月11日
ライター:鈴木富司
番号:000-073
タイトル: 三菱自工再建
 
 自動車輸出物語の執筆が途切れがちになってしまったのは、だんだんと、物語の種が尽きてきたこともありますが、本業の執筆業が忙しくなったためでした。

 しかし、正直申し上げて昨今の三菱自動車のクレイム隠しや経営危機に関連した騒動がマスコミで連日報道されると、とても昔の物語を書く気になれません。ダイムラーが金融支援を打ちきったというニュースあたりではまだ、「中村敬止御大ならどんな手を打ったであろうか」などと考えをめぐらし再建案などを作成して、現役の後輩にメールを打ったりしていたのですが元社長など幹部が多数逮捕されるまでに至ると、もうただ、祈るばかりです。

 発行されたばかりの月刊文藝春秋に、元社長逮捕に至る前の段階での記事としてですが、歴代の社長と組織の関係を説明しながら事件の背景を解説していました。丁度、私が三菱商事で、中国案件の失敗のあと自動車関係を一切捨てて、テーマパークなどの集客事業の世界に転身を図ったあとのストーリーでした。転身を図ったあとは、意識的にも自動車の世界から遠ざかっていたためもあり、その記事を読んでも、ほとんど実感がないことに気付きました。要するに、私が自動車産業界に在籍をしていたときは、良き時代であったということです。社会的責任論や社長の資質とか組織論は今後ともマスコミが取り上げるでしょから、それは元三菱商事マンとして、じっと耐えながら拝聴をするしかないなと思っています。

 逮捕者の中に、私の東京工業大学機械工学過程の同級生の名を見て、ふっと思うことがあります。マスコミで騒がれているときは見えていないことで、真実どうであったのだろうか、そこで彼がどうもがき闘ってきたのであろうかということです。これは、葬らずに冷静に言い分を聞き、分析をするテーマだなと感じております。私にとって関心があるのは下記のような技術論です。

 25年も前のことですが、インドネシア在任中にも、大きなクレイム事案に遭遇しました。大型トラックのフレームが折れるというとんでもないクレイム騒動でした。しかし、スマトラの奥地にまで技術者を派遣して貰い、三菱自工には対策をして貰いました。

 販売店側のわれわれとしては、大変な損害を被った大事件でしたが、メーカー側も莫大な費用を掛けて対処をしてくれました。その経験からすると、とても今回新聞が報道するような無責任な対応と言うのは考えられないことです。時代が変わったとか、対応する経営余力が無かったとか、組織が隠蔽体質になっていたので、個別の対応も打ちきったなどということは、本当に信じられないことです。

 誤解を招く懸念はありますが、いくつかの考えを述べてみたいと思います。インドネシアでのフレーム事件のときに感じたことですが、過積載をする市場に販売をすることが判っていながら、何故、フレームの強度を落としたかということです。単純に言うと強度の強い材質に変えて、厚さを減らしたから計算上は強度は減っていないが、実際上は耐えられなかったというわけです。

 目的は、重量を減らすことにあったというのですが、この点は、今でも不思議に思っています。それに日本にはテストをする悪路が無くなってしまったのも原因と聞き、ほんとかいなと思った記憶があります。それまで、北海道に残っていた悪路までなくなり、実験場の悪路では、本当の試験はできないのだとの説明を聞いたものでした。

 今度の事件は、ハブとクラッチカバーですよね。フレームであれだけの経験をしながら、また、リスクのともなう重量削減をしなければならなかったのには余程の理由があったのかなーと不思議に思っています。

 大型車と小型車の技術は、全く違うと考えています。昔、なるほどと思った経験を持っています。小型が専門の名古屋工場が設計する2トン車と、大型が専門の川崎工場が設計する2トン車は、まるで違うものが出来てしまうのです。川崎製はごつくて、コストが高いのです。結局、2トン車は川崎が設計製造したキャンターが主力になって、名車と呼ばれ、インドネシアでも随分売ったものです。とにかく、耐久性があり、酷使に耐えたのです。いすゞでも、トラック技術者と乗用車技術者の違いはいろいろ見聞したものです。

 そこで、全くの想像で仮説をたてて見ると、大型トラックを主体とした川崎工場で育ったひとと、乗用車で育ったひとが、混成チームで経営をすると思わぬ考えの齟齬がでるのではないでしょうか。そういう軋轢や意見の違いが今度の事件の遠因にあるような気がしてなりません。

 クレイム対応も大型トラックと乗用車は完全に違うという考えもあると思います。法的なことは知りませんが、リコールの方法も違ってよい筈だと思っています。一般論で言えば、大型トラックは、生産財ですから、販売店を通じて車の使われ方は把握している筈との前提で、個別対応で行けると考えたのかも知れません。でも、法律違反はいけないことは勿論です。

 いずれにしても、悔やまれることがひとつあります。それは、三菱には昔から三綱領というのがあって、三菱商事ではいまでも、その額を掲げております。

所期奉公
處事光明
立業貿易

 しかし、あるグループ企業の中の一社長が、それを変えてしまったのです。平易な文章にしたのです。とても覚えられるものではありません。三菱自工には、そのしまらない文章の三綱領が掲げてあったことがあります。現在はどうなっているか知りませんが、社員の心に訴える力はありません。とても、厭な予感がしたものです。

 時代を経て、前回クレーム隠し問題が起きたときに、この三綱領を変えたのが遠因だと考えました。それで、三菱商事の後輩を訪ねて、この話をして彼の部長室には三綱領の額を掲げて貰ったことがあります。

 三菱商事の後輩には、この精神は生き続けています。これから大勢の後輩が三菱自工の再建に派遣をされると聞いています。ほとんど、中村敬止御大の薫陶を得た人達です。必ず危機を希望に変える中村マジックを編み出してくれると期待しています。

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 梅雨や台風と気が晴れない日々が続きますね。今朝起きたら、足の指と甲がしびれるのです。もしや、脳梗塞かと、めったに行かない病院に駆けつけました。受付で、先ずは整形外科だと言われましてね、待たされました。診療の直前に思い出しました。昨夜、非常に混む電車の中で、若者に足を踏まれたのです。というわけで、原因が判ったし、レントゲン検査も無事でしたので、ほっとしています。

 現在「シニア・マーケッティング(仮題)」の原稿を書いています。昨年出た「知っていました?集客にお金はかからないのです。」の続編を出すことが決まりました。また、「トミーさん」として、蘊蓄を傾けることになりました。

 メキキパワープレゼンテーション講座のスタッフをやっています。明日は早朝から、第二回目の講座です。奥が深いんです。自分の過去を全部認め、統合すると志が明らかになる。それをパワーポイントを使って表現すると訴える力のあるプレゼンテーションになるというものです。
 
 
鈴木富司
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