自動車輸出物語 

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記載日付:2002年10月2日
ライター:鈴木富司
番号:000-0059
タイトル: 自動車国産化法令と実践 その7  
     (国産化法令が実施に移されたとき---どうしよう、さて困った)  

 1976年7月のことです。インドネシア政府が自動車国産化について時期を切って実施をするようにと省令をもって業界に命じてきました。いずれはそういうことになるとは考えていましたが、意外と早いなという感じでした。丁度、私が現地に転勤になり1ヶ月経ったときでしたので、よく覚えています。

 そのころ世界の趨勢としては、国産化を命じる場合、国産化率を示して実施を迫るものでした。しかし、その率が重量比であったり価格の比率であったりしますが、計算のしかたにより変わってきますので、結構難しいものでした。それをインドネシアでは、品目を指定する方法で国産化率を上げていく方法を採りました。これは、なかなか合理的な手法であると思います。要するに政府が調査をしてこの品目なら、もうインドネシア国内で生産をできると判断したら何月何日からは、完成品の部品は輸入をさせないということになるわけです。スハルトヨ工業省総局長も、商業車の輸入部品の関税は、既にゼロにしてあるし、これ以上の優遇策はないでしょうと、国産化移行に自信を示していました。後日談ですが、工業省のナピトプル担当官が良い方法を考えたろうと自慢をしていました。ナピトプル氏は大変気さくな方で、私も大変親しくお付き合いをしていろいろと意見交換をしました。

 面白い話を記憶しています。同氏については、いつも工業省でCKDアルバムなどのチェックをする担当官ですから、K-君が折衝をしていたわけです。そこで、その折衝の結果などを親分の中村さんには逐一報告をしていたわけですから、その名前は充分承知をしていましたし、工業省の重要な担当官ということも知っていたわけです。ところが、中村さんは直接会ったことがなかったので、顔を知らなかったのです。ある日、日本に行く飛行機で座席が隣り合わせになったのですが、どうも工業省の人らしいということが判ったので、いろいろ話をしている内に、「そのナピトプルとは自分です」と名乗られて多いに慌てたという話しです。そういう失敗談をするときの中村御大は何とも云えない笑顔で話すのでよく覚えています。普段謹厳実直な強面のことが多いので、そういう親分の失敗談は多いに楽しんだものです。

 さて、その部品の品目による国産化の対策ですが、K-君の提案で、事務所の一室に部品の現品を並べました。やはり名前や図面だけで議論するよりも、非常に参考になりました。技術者に検討を依頼する前にわれわれ自身である程度判断をする必要があるわけです。見るからに製造が難しい部品もありますし、これなら現地でつくれるだろうとの検討つける必要があるわけです。そうやって、検討をつけた部品ごとにどの程度の設備で製造できるかを三菱自工の技術陣に計画をつくって貰うわけです。ボデーのプレス部品やフレームは合弁の製造会社が稼働をしていましたから、そこの設備増強をすることで対応することにしました。

 こんな裏話もあります。インドネシアにおける三菱の主力車種であるコルトは、小型トラックです。日本での生産は余り数量が大きくないので、フレームは角形の鋼製のチューブを曲げて作る設計になっています。これが幸いをしたのです。他社の小型トラックは製造量が大きいのでコストの安い平板を大きなプレスで曲げてつくっていたのです。インドネシアにおいてそんな大きなプレスを設備したらとても償却などできません。われわれは角チューブを折り曲げる機械と溶接機があれば国産できるのです。いち早くフレームを国産化しますと工業省に申し出ました。こういうことも競争が激しい自動車産業ですから起こるわけです。他社がどう対応したか、工業省がどう案配したかも全く記憶にありません。他社が、それは困ったであろうことは想像できます。

 それからマフラー(排気管)とか板バネとかの品目を追加していくわけですが、全品を自社工場でつくるわけにもいきません。しかし、地場産業が全くありませんから、いわゆる下請け屋さんを育てていかなければならないのです。誰にそれをやらせるか、工場は、資金はどうするという難問が待っていました。次号では、そういう中で出会ったインドネシアでの事業家との出会いの物語を書きましょう。彼とはいまでも家族ぐるみでお付き合いを続けています。

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 昨晩の台風には驚きましたね。久しぶりで古巣の丸の内におりました。岐阜世界淡水魚園について米国本社のデザイナーとの打合会がありました。終わるのを待って、一目散に帰宅をして無事でした。

 このところ、多いに楽しんでいます。ベネチア4泊、フィレンツェ3泊の旅から先週金曜日に帰ってきました。東芝の最新のダイナブックを持って、仕事はずっとつづけておりました。この物語も飛行機の中で大半を書きました。名付けてTOHO(Travel Office Hotel Office)での仕事です。と云っても私のは楽しみでやっていますから、リゾート地でも違和感がありません。幸せ者です。

鈴木富司
larszk@yk.rim.or.jp
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