自動車輸出物語 

戻る

ホームページ

国別表

メーカー別表

記載日付:2002年9月18日
ライター:鈴木富司
番号:000-0058
タイトル: 自動車国産化法令と実践 その6
     (合弁契約交渉)  

 1972年頃のことです。インドネシアで自動車製造をする合弁会社を設立することになりました。欧米の会社では絶対に手を出さない状況でした。製造に関する法令も明確ではなく、更に資本比率も50/50しか認められなかったのです。当時、どんな経営書を見ても51%以上を確保しないと失敗すると書いてありました。特に50/50では責任がはっきりしないから、通常ではやらないのが常識でしょう。しかし、インドネシア政府もパートナーも50%までしか認めなかったのです。

 50/50ですと、どういうことが起こると思いますか。早速、合弁契約交渉の過程で発生しました。取締役の選任の条項を協議しているときのことです。両方の意見が食い違ったらどうするかという話し合いの席上でのことです。意見が分かれたら社長が決めるという案を日本側は提案したと記憶します。社長は日本側が出すと最初から合意をしていたからです。インドネシア側は反対でした。そして、「by lot」にしたらというのです。「くじ引きで決める」ということです。まるで西部劇の世界です。これにはこちらは絶対反対しましたね。経営を任せる取締役をくじ引きはないよということです。結局、もし発議に対して50/50になったら、「to be rejected」即ち否決して、現状のままということになりました。私も1976年から1981年まで非常勤ながら取締役をしていましたが、特に問題は発生しませんでした。まあ、自動車の製造と云いましても、主要な部品であるボデーのブレスをするだけの会社でしたから、経営書が警告する対象にはならなかったのかも知れません。組立はインドネシア側の工場でやっていましたし、それほど利益もでない会社でしたからね。

 さて、その合弁会社設立交渉は大変印象深いものがあります。三菱自動車企画部の井上建三さんとその交渉に当たりました。相手はインドネシアのコントラクトブリッジの選手も務めたことのある非常に頭の切れるアムラン・ザミザミ氏でした。アイゼンハワーを少し色黒にした目の鋭い精悍なひとでした。北スマトラ、アチェ地方出身者だと聞いて、緊張したものです。交渉がはじまり、私が契約案を一条ごとに説明をしました。低いなかなか聞き取りずらい小さい声で質問がでます。割合と判りやすい英語なのですが、質問が格式ばっているのです。資本金額は妥当かとか、その理論的根拠はなどという質問です。自然と相手は合弁契約の全ての条項について熟知をしていて、こちらの交渉団の力量をチェックしているという雰囲気になるのです。不思議なものです。それが交渉術というものなのでしょうね。こちらは37歳、それまで英語による本格的な国際交渉は経験がありませんから、ちょっと緊張しましたね。井上さんに助言をもらいながら、その最初の質問攻勢は何とか切り抜けました。夕方になると、二人して重いカバンをもって、中村親分に報告に行き、本社に報告を書いたのを思い出します。

 こんなこともありました。2回目か3回目の時でした。休憩時間に井上けんちゃんと日本語でとりとめもない話をしていました。本社の関係者の名前が沢山でていたと思います。そうしたら、アムラン氏が、英語で、KUN とSANの区別はどういうことですかと話しかけてきたのです。多分、会話の中で、水野君とか、中村さんというように、君づけとさんづけをしていたようなのです。絶句しましたね。しまった、彼は日本語が判るのだとさとったのです。多分、彼も武士の情けだったと思うのです。その時は別に交渉内容について井上さんと内部打ち合わせをしていたわけではないのです。若い二人が気づかずに俺の前で秘密の話はしなさんなと、それとなく日本語が判るよと教えてくれたのかも知れません。見かけによらず笑顔が素敵なよい交渉相手でした。パートナーのオーナーさんには大変忠実な優秀な男でした。あの小さなもの静かな話しぶりは合弁交渉の中で強い印象として残っています。人間関係ができてからは、冗談も交えてよい交渉となり、特にもめ事も記憶していませんね。

-----------------------------------------------
◆ 自動車輸出ホームページ−−−−−→ http://www.yk.rim.or.jp/~larszk/
◆ バックナンバー −−−−−→ 
       http://backno.mag2.com/reader/Back?id=0000038036
◆ ご意見・ご感想・投稿はEメールで(歓迎)−ー→ larszk@yk.rim.or.jp
◆ おともだちにこのメールマガジンの登録をすすめる場合は −ー→
             http://www.mag2.com/m/0000038036.htm

   まぐまぐしたくなったら -> http://www.mag2.com/
かいじょしたくなったら -> http://www.kaijo.com/
けんさくしたくなったら -> http://www.lib2.com/
----------------------------------------------------------- 

 葡萄も全部収穫が終わりました。今年は手入れがゆきとどかず、可愛そうなことをしました。

 次男に2番目の女児誕生、孫が6人になりました。このところ新しいプロジェクトの推進で、久しぶりに夜中まで仕事がつづきました。それに、購入した東芝ノートブックにMACの膨大なファイルをコピーするのに手こずっていました。結局、CDロムに焼いて移し、読めないファイルをメールで送ったりして大体完了しました。これで旅にでても仕事ができます。名付けてTOHOです。(Travel Office-Hotel Office)

鈴木富司
larszk@yk.rim.or.jp
http://www.mekikicreates.com/mailmag.htm


       前の物語

       次の物語