自動車輸出物語 

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記載日付:2002年8月28日
ライター:鈴木富司
番号:000-0057
タイトル: 自動車国産化法令と実践 その5
     (法令より先行してプレス工場を建てた話)  

 組み立て工場のつぎは部品の製造という問題がでてきます。タイヤとかバッテリーのように大量に補修部品として売れるものは商売として成り立ちますので、自動車会社に関係なく国産化が平行して進められていました。供給量がある程度に達っすると工業省より通達がでて、いついつからは国産品を使いなさいという指令が出されるわけです。しかし、問題はそう簡単ではありません。タイヤといってもいろいろな種類もあるし、生産量も、こちらの計画と合わないと大変なことが起こります。

 あるとき、緊急の国際電話が入り、タイヤが輸入禁止になったので他の部品と一緒に船積み寸前のタイヤを港で降ろして欲しいというのです。困りました。本当に寝耳に水の情報でした。単なる手違いなのか、本気で輸入禁止措置なのかが判りません。船の出港の時間はせまっています。

 それを判断するのが自分の役割だとは心得ていましたが難しいのです。たとえばあるとき引越し荷物の乗用車が輸入禁止になりました。事前には判りませんから海外から引越し荷物として持ち込んだひとは悲劇です。かなりの台数が港で朽ち果ててしまいました。多分、引越し荷物を偽装した悪質な輸入が行われたことに対する措置でしょうから仕方のないことです。われわれの仲間でもカラチから丁度転勤になり自家用車を運んだのですが、港で没収されてしまったのです。そういうことがありますので、一人で決断できず、上司の林哲男部長に相談をしました。いくつかの質問をしたあとにじっと考えていて。そのまま出航させなさいという明快な指示でした。剃刀テッチャンと言われた非常に頭のよい方でした。しばらくして何かの手違いで、そういう指令がでたことが判り、船積みしたタイヤは無事輸入ができ組み立てにも支障はでませんでした。

 さて、自動車国産でまず対象になるのがボデーです。それまで日本からプレスをした部品を持ち込んで溶接をして塗装をしていたものを現地でプレスをして欲しいというのが現地の工業省の希望です。いきなり法律を出しても莫大な投資が必要です。それに見合う台数を組み立てている会社は少ないですから1社だけ生産をして他は輸入禁止にしては、市場のニーズに応えられる車種が揃わないわけです。独占させて貰っても大変重荷になるわけです。そこで法律で指令をするのではなく、個別に工場を建設をして欲しいということになったわけです。自動車のボデーすべてをプレスするのではなく、荷台のみをプレスする計画をつくって工業省に提示をしました。それで是非お願いしたいというわけで、400トンプレスを装備した工場を合弁会社の形式で設立することになりました。三菱としては相当の決断でした。通常、法令上やむを得ず工場を建設するということはありますが、国の意向を汲み取ってテスト的な工場を建てたわけです。

 工場の管理職から作業者まですべて教育をして育てなければならないのですから、法令がでてから短時間の間に教育するよりは徐々に教育をしようとの考えでした。ここでもいずれは国産化法令はでるであろうし、工業省やパートナーの熱心さに応えたほうが得策であろうとの考えでした。

 具体的には結構大変なプロジェクトでした。まず行ったのは構想の立案と工業省に提出する企画書の作成でした。技術的なことは三菱自動車工業に作成してもらい英文でまとめました。

 輸銀からの借り入れも大きな挑戦でした。以前タイ国での販売事務所の資金を借りるときに担当をして全部の書類を作成していましたので勘所は知っていました。そうです、MKMプロジェクトと称して、水野明君がばっちりした書類を作成してくれたのを覚えています。黄色い表紙のついた分厚い書類でした。

 合弁契約の交渉、これは三菱自動車企画部の井上建三さんと私が中心になって行いました。本格的な国際的な契約交渉ですから、緊張もしました。その後の交渉術の基礎にもなったように思います。いろいろな物語があります。別途書きましょう。井上さんも寄稿をしても良いよと云って下さっているので、ご披露できるでしょう。

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 居間に座っているとデッキの葡萄が香ります。

 念願のノートパソコンを手に入れました。東芝の極薄の12インチです。7時間のバッテリーがついて正味1.5キロ。持ち歩くにはこれが限界ですね。早速渋谷のしゃれたCafe di Espresso というエアーステーションのある喫茶店に行きました。無線受信をやってみたかったのです。若い人が誰もやっていないのですよ。ちょっと得意でもあり、恥ずかしくもありました。この文章も電車の中でキーボードを叩いてつくりました。新しい道具が好きなんですよ。

鈴木富司
larszk@yk.rim.or.jp
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ここからは、私も関係しているプロジェクトの宣伝です。
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