自動車輸出物語 

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記載日付:2002年7月24日
ライター:鈴木富司
番号:000-0055
タイトル: 自動車国産化法令と実践 その3 
(組立工場建設の物語 その1)

 タイにおける組立工場は調査の段階で関与しました。それは既に物語にまとめていますのでインドネシアにおける組立工場建設の物語をしましょう。数えて見ると、何と5つも組立工場を建設しているのです。その他にバスの工場が3つもありましたから結構いろいろな物語があります。

 最初の建設は、既存の工場を改修することから始めました。戦前の工場です。1970年に二つの工場を同時に立ち上げたのです。ひとつは750キロ積みの小型トラックの工場です。ジャカルタ市の中心街、それも独立広場や大統領府が見える位の近いところにあった由緒ある工場でした。ペルモリンという会社の工場です。もう一つがジープを組み立てるために改修をした軍の通称パラッドという工場でした。

 組立工場を建設するのに重要なファクターは塗装設備をどの程度にするかということと、JIG(治具)の調達です。ペルモリンは三菱重工水島工場が担当し、パラッドは名古屋工場が担当しました。塗装方式が違うのです。水島はラッカー塗装にすれば、温度が低くて済み設備が安上がりだとの見解です。名古屋は、エナメル塗装を主張し、安くても高温にする方法はあるとの主張でした。それに塗料代がエナメルの方が安いという利点があるというわけです。両方のチームは、もっと大きな違いがありました。水島組は大酒のみばかりでした。名古屋から見えた指導員は皆飲まないのです。偶然そういう組み合わせになったのでしょうが、随分と雰囲気が違いましたね。塗装方式の違いは、あとで両方ご正解ということになりました。何しろトラックの方はほとんどがバスに改造されてしまうので、表面をカチカチに焼き付ける方式でない方がよかったし、ジープは光沢のあるエナメル塗装でよかったわけです。

 いろいろな思い出がありますが、パラッドの設備を担当していた山田さんという指導技師が、米俵をどんと積んでやりたいというのです。当時はまだ、インドネシアも非常に貧しく、作業者がお腹が空いてピットもよう掘れないというのです。昼食を出しても、家の子供にやるとて食べないで持ち帰るというわけです。休み時間は、空腹をこらえて日陰でじっとしている。気の毒で見ていられないとの説明でした。目標の開所式にも間に合わないという窮状を訴える山田さんの話しぶりを鮮明に覚えています。えっという感じだったからです。

 ペルモリンでも、問題続出でした。ブレーキテストを独立広場で行った物語は書きましたが、初号車も無事出荷して漸く生産ができるようになったある晩のことです。水島から来ているチーフ指導員の谷口さんが「鈴木さん、発電機が止まってしもうた、何とかしてよ」というわけです。もうやりきれんという口振りで訴えるわけです。もう、夕暮れで暗くなりかかっていました。当時は、電力事情が悪くて、工場の稼働はすべて自家発電機に頼っていました。何しろ古い工場です。ペルモリンの副社長のシダブタール氏が何とか廻そうとしているのですが、ちょっと廻すと冷却水が沸騰して蒸気が噴き出してしまうのです。結局、彼と連れだって発電機を修理するドイツ人の技師を捜してジャカルタの市内を走り回りました。街の中心部の住宅街で家が見つからなくてぐるぐる回ったことを覚えています。結局、ラジェーターに虫がびっちりつまっていて、冷却ができないことが判りました。虫と油で固まると、簡単には掃除できないのです。ラジェーターを破損しないように、注意深く虫を掘り出してやっと運転再開になったという物語です。

 発電機では、他にも思い出があります。そのあと工場を建てるたびにヤンマーが製造している低速式の発電機がよいか、三菱重工が売り込みにきている高速の発電機がよいかが問題になりました。現場の技術者は低速式がお好みのようでした。それでも、三菱重工の売り込みをむげに断るわけにもいかず、随分とその違いを比較検討したものでした。高速式は耐久性がないという意見なのですが、どこの耐久性かという議論になると、明確ではないのです。予備は持てないし、万一故障でもしたらえらいことになるわけです。当時圧倒的にジャカルタで実績のある低速式を選んで、ずいぶんと三菱重工さんには睨まれた覚えがあります。

 55号ともなると、前に書いたのではないかなと重複が気になります。次回は、スラバヤに工場を建てないと東部ジャヴァでは販売ができないという電話を貰い、工場を建ててしまったとい物語を書きましょう。

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鈴木富司
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