自動車輸出物語 

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記載日付:2002年7月10日
ライター:鈴木富司
番号:000-0054
タイトル: 自動車国産化法令と実践 その2 
(CKDの内容は写真が決め手)

 国産化法令はインドネシアの場合は工業省が管轄です。最初はCKD(Complete Knock Down)と称した、こまかくばらした部品を輸入して現地で組立なさいというものでした。しかし、エンジンの内部部品までばらしてしまったら大変ですから、最初はエンジンの周りについている発電機などの部品のみをはずしてきて、現地で組み付けなさいという訳です。

 問題はフレームとキャビンです。これをばらして持ち込むと、現地側でリベットや溶接、更に塗装が必要になるわけです。これに設備費がかかるのです。そういう設備や技術のないところは輸入が出来なくなってしまうのです。逆に、そういうのを許していると、価格的に現地組み立て品は競争できませんから、自動車産業が発達しないわけです。しかし、そこでその部品のばらし方、即ちCKDの程度が重要問題になるのです。誰がその判断をするかというと工業省の担当官の判断になるわけですが、まだ、組立が始まっていない段階では、詳しくその実情が判らないわけです。ちょっとしたことでも、設備投資が莫大になるのです。ですから、われわれは担当官と本当に膝を交えて実情を理解して貰うようにつとめる訳です。まさに人間関係が確立しないとできない話しなのです。
 
 さて、決めるのは工業省でも、実際の現品を港でチェックするのは財務省管轄の税官吏です。通常は、品物の名前で通関を許可するかどうかが決まるわけですが、個々の部品には名前もありません。更にそのばらし方によって、通関を許可するものと許可しないものに分けなければならないわけですから大変です。それも、各社の車型が違いますから、とても文書ではどうにもならない世界です。そこで、各社に写真を撮って提出しなさいと指示がでました。これも結構な数の提出部数でしたし、われわれの関係部局の控え分を含めると馬鹿にならない数です。コストも随分かかりました。まあ、これは仕方ないことと思ったし、われわれとしても、安心な部分もあったのです。工業省の担当官が変わったり、税官吏の個々の解釈でいろいろな判断がでたらえらいことになるからです。写真という動かぬ証拠で関係者によって確認されたわけです。

 ところが、あるとき現地のK-君から、鈴木さん大変だと連絡が入ったのです。すべての部品の写真を再度提出せよというのです。それも30センチx20センチくらいの大きさの写真にせよというのです。今ならデジカメで撮影し、パソコンでプリントできますから、手間さえ掛ければできないものでもありません。しかし、当時は大判の写真は非常に高価でした。それも、一車種でも、積み重ねると一冊何十センチという分厚いものでした。それを何冊もつくるわけですから、無茶をいうなとメーカー側も大むくれでした。理由を聞いたらうなってしまいました。ある業者がエンジンみたいな大きなものを小さな写真に撮って付属している小さな部品が何だか判らないようにしたというのです。工業省と税関の逆鱗に触れて全部、大版の写真にせよということになったというのです。

 われわれは、最初から国産化には協力をして、順当に進める方策を工業省の担当官とともに考えてきたものですから、本当にえらい迷惑な話でした。それ以来、CKDアルバムと称して新型車がでる度に山のような写真アルバムを提出したものです。

 それから、約10年が経過した1984年頃のことですが、中国で自動車国産化の大ブームが発生して、各地から30件くらいの国産化プロジェクトが持ち込まれました。そのときにこのCKD問題があったのです。何しろ大きな国です。税関の数も桁違いに沢山ある国です。こういう国でもあの写真アルバムをつくらせるのかななんて考えていたところ、ある人から大型トラックの運転席(鋼製のキャビン)だけをCKDで輸出して、その組立工場を建設して欲しいというプロジェクトを持ち込まれたのです。キャビンのCKDは当時輸入禁止の筈だと応じると、中国の南の方は輸入ができるというのです。別に、どの港とか何々省と具体的な話ではないのです。更に、驚いたことに組み立てたそのキャビンはどこでどいうトラックに載せるのかと照会したら、鉄道で何千キロも北の方に運び、中国製のトラックに載せるというのです。当時、日本では工場の合理化に血眼になっている時代で、部品の搬送距離をメートル単位で短くしようとしているときですから、驚きました。何千キロもそれも空気の固まりみたいなキャビンを運ぶという、この自由な発想に圧倒された記憶があります。さすが、白髪三千丈の国だと妙なことに感心したものです。この中国で、自動車国産化を合理的に推進するにはどんな法令が有効なのだろうと、真剣に考えたものです。

 インドネシアでは、こういうCKD組立を経て、部品の国産化に進むわけですが、CKD組立はいろいろなコストが掛かり、日本から完成車で持って行く方が船賃を考えても安いのです。しかし、そういう一見経済の合理性を無視した形で強引にCKD組立から入って、ついに自動車産業を育成していったわけですから、アジア各国の行政官は立派にやったと思います。中近東とアフリカでは、上手く行っているところは少ないようです。中国は別格です。別の方式で自動車産業を発達させつつあります。

 次回は、組み立て工場の建設にまつわる物語にしましょう。

 
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 台風が間もなく上陸するようです。庭の物干しなどを地面に伏せたり、一応の対策はしました。

 中村御大が亡くなられて2年が経過しました。自動車輸出物語も3年目です。まだ続けて書けそうです。

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