自動車輸出物語 

戻る

ホームページ

国別表

メーカー別表

記載日付:2002年6月12日
ライター:鈴木富司
番号:000-0052
タイトル: 乗用車2万台一括という凄い商談 その3

 自動車の2万台商談の前提条件として、部品庫と修理工場を建設して引渡しますということになっていました。商談に参加するために建設の見積書も提出してありました。丁度、イラク・イラン戦争の始まる直前でした。自動車輸出物語000-0012「 インドネシアのリゾート地からイラクの灼熱地獄へ」で書きましたように、日本製は3倍も高いので、クエートのメーカーや地場の寄せ集めの工事で対処する案でしたので内心心配をしていました。

 自動車の商談が煮詰まったら、イラクの公団側からメーカーの指定があったのです。何と、イタリアのカサッチオ社かオーストリーのメーカーいずれかとやれとのことでした。当時、イタリアは大変評判がよくないときでした。イタリアと云っただけで、社内の建設部門のひとや現地で知り合いになったコンサルタントは、吹き出してしまう状況だったのです。誰も相手にしないどころか、真剣にお止めなさいと助言をするのです。しかし、反対されると逆らう質ですし、また状況からして公団に提示された条件を無視するわけにもいきません。

 イタリアのその会社の社長と営業のひとがバクダッドに出張してきていました。ひとの良さそうな社長でした。英語は、それほどで上手ではなかったと思いますが営業のひとの通訳で交渉を開始しました。そこで、実績があるかどうかを聞きましたら米国のGM社が起用しているというわけです。

 直接聞いてやれと思い、先輩格の GM社の現場事務所を訪ねました。よく覚えていませんが、やっと探し当てて、2階建ての現場の事務所を訪ねた光景は少し覚えています。あっさりしたものでした。良い会社だというのです。どういう風に管理をしたのかを聞きましたら、カナダの会社にコンサルティングを依頼したというではありませんか。その会社を紹介してくださいということになり、カナダ人のコンサルタントとも会いました。

 確かに、イタリアの カサッチオ社の見積は安いのです。一見、とてもまともなのです。でも、周りのひとは、絶対に信じてはいけないとの助言でした。社長が安い理由を説明してくれました。それまで、イタリアは労働組合が強く、自分も会社を潰してしまったというのです。それで、信用のおける職長と個人的に契約をして、労働者を雇うシステムだと云うのです。全てプレハブでイタリアの自社工場で製作し、コンテナーで陸路をバクダッドまで陸送をするわけです。現地での鉄骨の組立、屋根と側板張りなど行程ごとに職長グループを分けて鉄骨1トンあたりいくらで契約をするというわけです。灼熱の砂漠地帯ですから、昼間寝て、夜に突貫工事で作業をするから、普通の会社より、一日の作業時間が遙かに多いのだそうです。時間外労働賃金も不要とのことでした。不満分子は、親方が雇わないというシステムです。ですから、工期も短く、その間の重機の使用料が安いのだとの説明です。更に、必ず予定工期より短くなるとまで云うわけです。こんな熱いところに長居はしませんと笑うわけです。

 分厚い標準的な契約書案にもとづいて、契約交渉を進めるのですが、非常に難しい問題がいろいろとありました。会社の法務部は最初から無理だと諦めていました。何故かというと、土地は公団のもので、そこに建てる建物施設は自分の所有にならないわけです。しかし、完成までは全責任を負って、完成をしてから引き渡すというものです。所有権や責任関係を調べていくと法的に判らないことだらけなのです。細かいことを云ったらとても纏まらない契約でした。

 工場を視察する必要もあり、北イタリアのパルマ市まで出向きました。一週間滞在をして、契約の詰めを行いましたが、そのなかで戦争による被害がでたらどちらが責任をもつかという条項がありました。慣習的には当然工事をする方が責任をもつべきということになり、法務部もそう指示をしてきました。しかし、社長が、泣きそうな顔をして、平時なら良いでしょうと言えますが、現在あそこは戦争中で、いつ爆撃があるか判らないのです。それを、こんなちっぽけな会社に責任を持てというのですかというわけです。確か、あといくつかの難しい問題を残して暫定的に合意をして、東京に帰ってから上司の中村御大の承認を得て契約に至ったと記憶します。

 それで、パルマ市では驚いたことがありました。あれだけ泥棒が多いと云われていたイタリアで、自動車にカバンを入れたまま、鍵を掛けないのです。パルマには悪いひとはいないというのです。どうも、言葉でパルマ人以外はすぐ見分けがつくらしいのです。営業のひとも、パルマ人ではないので、なにかとからかわれていました。そういう光景を見て、イタリアでも良いイタリアと悪いイタリアがあるのだし、自分がオーストリーの会社ではなくこの会社を選んだのは、良かったのだと確信を持ちました。あとで、オーストリーにも行っていたら、そちらを選んでいたかなと思ったりもしました。

 この建設の交渉は、細かな点でいろいろ難問がありました。それを相当時間もかけて解決をしていった達成感は非常にありました。何しろ、最後に公団の責任者によくぞ纏めてくれたと感謝をされたのです。組織のひとりの人間がそういうことを口にするのは本当に珍しいことだったのです。彼らも妥結が難しいなと感じていたのかも知れません。また、買い付け窓口とは違って現場に近い人間なので、こちらの苦労を察したのかもしれません。工事は非常に順調でした。毎週、カナダ人のコンサルタントから報告書が届いていました。

 後年米国の会社に転職をして、テーマパーク、動物園、水族館の仕事に従事することになりましたが、日本の建設業界は、まだ20年前と同様、外国の会社は全部ダメという雰囲気がありすね。

-----------------------------------------------
◆ 自動車輸出ホームページ−−−−−→ http://www.yk.rim.or.jp/~larszk/
◆ バックナンバー −−−−−→ 
       http://backno.mag2.com/reader/Back?id=0000038036
◆ ご意見・ご感想・投稿はEメールで(歓迎)−ー→ larszk@yk.rim.or.jp
◆ おともだちにこのメールマガジンの登録をすすめる場合は −ー→
             http://www.mag2.com/m/0000038036.htm

   まぐまぐしたくなったら -> http://www.mag2.com/
かいじょしたくなったら -> http://www.kaijo.com/
けんさくしたくなったら -> http://www.lib2.com/
----------------------------------------------------------- 

 葡萄が大分実を大きくしています。梅の実も今年は多いみたいです。すっかり、サッカーですね。やはり一流の試合は面白い。なんとはなしに、テレビを見る時間が増えて、睡眠不足気味です。

 メキキ・クリエイツの仲間からメールマガジンを同時多発的に出そうと誘いがかかり、もう一本書くことにしました。題は、「わくわくさせて、儲けよう。----経営者の目からうろこを落とします!!!」となる予定です。登録したら案内をしますので、見てくださいね。

鈴木富司
larszk@yk.rim.or.jp
http://www.yk.rim.or.jp/~larszk/


        前の物語                        次の物語