自動車輸出物語 

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記載日付:2002年5月29日
ライター:鈴木富司
番号:000-0051
タイトル: 乗用車2万台一括という凄い商談 その2

 通っているうちに少しずつ情報が入るようになりました。また、正式な呼び出しもありました。責任者の総局長さんが相手でした。こちら側は、4人か5人でした。メーカーから派遣されたひとは、ほとんど発言をしないで、もっぱら筆記役でした。話が矛盾をしたら突かれますから、商談の話はすべて私が発言をするという格好でした。失言をしたら即、報告書に書かれて関係者全員が知ってしまうという厳しい状況でした。

 あるとき、3時に接見するとの呼び出しがありました。総局長の待合室に日本の別のメーカーのひとがいるのです。「あれ、お宅何時のお呼び?」と聞かれたので、「3時」と答えると、「うちもそうなんだよねー」というわけです。あとから事情が判りました。何と、われわれが先に呼ばれて会談が始まってもドアは閉めないのです。いつもより大きな声で話すのです。あ、牽制しているんだと判りました。だんだん、具体的な話しになり、値段の交渉になると、ニヤッと笑ってドアを閉めるのです。

 大分あとからそのメーカーさんに聞いた話では、われわれのあとに商談室に入ったら、三菱ギャランの大きな写真を見せて、どうだ綺麗な車だろうと言ったそうです。天秤が彼らの商売の原点です。いつも、比較・比較なのです。少しでも天秤が傾くと、相手にいうわけです。あっちは安くて、良い品だよと。2万台の自動車も、泥のついたキャベツも一緒というわけです。

 これでもかと、違った条件を出しては値引きを要求します。それも不思議なのです。金曜の午後にきつい条件を出して、月曜の朝までに回答せよということが多かったようです。緊急で、即決させようとの狙いなのでしょうか。経理担当重役の耳にでもはいったら反対されるのを見越したのかも知れません。勿論、回答が出なければ他社にいくよというセリフがあるわけです。あるとき、今の時間では東京へは連絡が付かないといったら、「何をいう、貴方の上司は貴方の回答を首を長くして待っている筈だ。日本ではゴルフ場でも電話がつながる。」というのです。ああ言えば、こう言うでは、百戦錬磨の非常に頭のよいひとでした。

 相手は、そう簡単に言えるがこちらは大変です。国際電話がつながらないのです。駐在員の自宅から3人交代で朝から夕方まで電話を廻し続けたことがありました。誰かが今度新人を雇うときは、指の強いやつを雇わねばねと言って笑ったのを覚えています。他に何もすることがなく、ただただ、長椅子に寝るか、ダイヤル式の電話をもくもくと何時間も廻し続けたのです。テレックスは通じました。常時接続ですから、本社の課長を電信室に呼び出して、自分でキーを叩いたこともあります。バクダット支店長が俺にも言わせろといって、本社から打ってくる電文を睨みながら「ダメ」とどなったことがありました。思わず、DAMEと打った記憶が鮮明に残っています。電文はすべてローマ字だったのです。いまでも、ひとがしゃべるのをローマ字で打ち出す技術はもっています。

 もう、これが最後だという条件交渉は何度あったか覚えていません。さよならビットをしない限り、相手は執拗に値下げや有利な条件を要求してきます。要するに、「この条件より値引きや不利な条件は出しません、他社に全量とられても致し方ありません。」と言いきらない限り、延々と続くのです。相手の問題ではなく、こちらの問題なのです。しかし、組織で動いていますと何年も掛けて、2万台もの注文を他社にいってもやむなしと決定するひとがいないわけです。商事会社の立場ですと尚更です。相手も、メーカー側に権限があることを知っています。それではそのことを紙に書いて持ってこいということになるので、本社の許可なしに口頭でも下手なことは言えないのです。

 まあ、それでも4ヶ月に及ぶ交渉にもなりますと、相手の気心や癖が判ってきます。会話の内容である程度、これが三菱側の最終だなと思わせることはできるわけです。いずれにしても、これ以上叩いても下がらないという印象を与えるとともに、彼が上司や仲間に、もう下がらないという説明できるように、エピソードを提供する必要があるわけです。そういう発言をしたのです。その内容は、考え抜いた私の秘策でした。日本側にわかったらしかられる内容ですから、墓場まで持っていくことにしましょう。相手の顔が変わりました。それを見てとって、相手は三菱に決めたなと確証を得ました。交渉妥結という報告をして、選手交代とさっさと帰国をしてしまいました。その後、メーカーの取締役を団長とする交渉団を送れということになり、正式に契約になったわけですが、そこでもまた新しい条件を呑まされたようですから、とにかく、相手は凄腕でした。

 さあ、この商談にはすごい条件がついていました。部品庫と修理工場を建設せよという条件です。それもイタリアかオーストリーの業者を使いなさいという条件です。日本の業者の1/3くらいに叩き抜いた候補のいずれかを使えとの条件です。さあ、どうする。灼熱の砂漠に断熱装置のついたとんでもない仕様の建物です。これも、私が経験したすごい自動車輸出物語です。次回を楽しみにしてください。

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 雨がちょっと多いですが、良い季節ですね。お元気ですか。

 仕事というか、楽しみというか、自宅SOHOで結構忙しくしています。永年の夢であった米国ラーソン社による本格的な水族館の設計は「岐阜世界淡水魚園」として進んでいます。米国SQA社員としての、インスペクター・コーディネーションの仕事も週10時間ベースで行っています。更に、株式会社メキキの執行役員に就任して、新しし3Dオブジェクトの販売の仕事をはじめました。本業は何かと聞かれると困ってしまいます。でも、一番楽しいのは、特許開発です。顔写真もでていますから、   http://www.mekikicreates.com/staff.htm   を見てください。

鈴木富司
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