自動車輸出物語 

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記載日付:2000年12月27日
ライター:鈴木富司
番号:000-0014
タイトル: 事務機の進歩と自動車輸出

どうも私は小さいころから道具が好きなようです。ときどき目的を忘れて道具のために仕事をすることさえありました。振りかえってみると最新式の道具は随分と使わせて頂きました。いすゞ自動車さんから鍵とともに送られてきたパンチカードをはじめて見たときは穴を眺めて1時間も考え込んでいました。上司があきれて見ていたようです。タイ向けいすゞ車の代金回収にPCS を導入したことや初期の大型コンピューターを使っての採算計算の物語はいずれまとめることにして、普通の事務機についての物語としましょう。

入社したての頃のコピー機は青焼きと称して感光紙に焼くタイプですがこれがよく紙詰まりをしましてね往生しました。手紙はカーボンをはさんで書くわけですが、先輩がセロファンを頭に押しつけている姿が印象的でした。頭の油をつけて鉄筆がすべり易くしているのでした。いつ頃だったかシカゴの駐在員が最新のゼロックスに写した手紙を本紙として送ってきたら、文書規定と違うというような意見をいうひとがいましたね。手紙の本紙はカーボンで記載したものとの規定の意味ですから、隔世の感があります。私は白い紙に黒い字のコピーに感動したものです。入社当時のバンコックとの連絡はテレックスもなく、電報でした。一語90円です。当時の月給が1万4000円のときですから、通信費は大変高価なものでした。一通が今の価値で直ぐに1万円を超えるわけですから、勿論平文では打てないのです。特別に注意を払って暗号のように短くするわけです。いつも、何字あるか、何語になるかを数えて通信費を記入して課長の許可が必要でした。

タイの電話事情も悪くてつながってもなかなか聞き取れないのです。そこで、最新のビクターフォンテという録音機を導入しましてね、いすゞさんから掛かってくる電話を幅7センチくらいの紙に録音してはそれをバンコックに送っていました。イラクでは交代で朝から晩まで10時間以上ダイヤルを回し続けたこともありました。それは電話をつなぐためにですよ。局がでるまで回し続けるよりしょうがないからです。他にすることが無かったからできたのでしょうが、難行苦行ですよ。ファクスではいろいろ思い出がありますね。商社は情報機器の導入には早く対応するのですが、メーカーさんにファックスの導入をお願いしても、当時は大変高価なものでしたから、商社より導入が遅れるのですね。半年粘って実現したときはほっとしました。現地から入るローマ字テレックスに訳語を記入しても、電車で届けるか電話で読み上げるしか出来ないのです。急激に輸出台数が伸びたときで、担当者が忙しくて手が回らなかったのです。現地に赴任したときも、ファックスでは面白い物語があります。インドネシアの隅々まで販売店を展開したのですが、そこに短波無線のファックスが引けるというのです。まず、スラバヤに実機を持ち込み実験をしました。そういうことが好きだというのがお判りでしょう。技術的には問題がないようなのですが、電波法違反だというのが判りましてね急遽取りやめました。E-メールの時代になってみると嘘のような話しです。

計算は算盤でした。かけ算はタイガー計算機、手回しのやつです。あるとき、イタリア製の大型の電卓を入れて貰いました。嬉しかったですね。80万円くらいした筈です。輸銀融資の申請書に添付する資金繰り表をつくって輸銀に持ち込んだら下二桁で四捨五入しているでしょうと、担当者が話しかけてきましてね。使っているキャノーラという日本製の電卓を自慢するわけ。こちらはイタリア製ですよなんて資金繰りの中身ではなく道具の話で終わりました。

英文タイプでは傑作な話があります。インドネシア政府に提出する合弁申請書のようなものだったと思いますが、何度も再作成・再タイプを繰り返して飛行機に飛び乗ったわけです。そのときに、飛行機の中で気がついたのです。きっとIBMに行けば記憶式タイプがあるに違いないと。帰国するのを待ちきれず、ジャカルタのIBMの支店に飛び込んで聞きましたら、テープ式の英文タイプがあったのです。帰国次第、総務部に交渉しました。日本IBMの人がテープ式より進んだカード式が出たばかりですということで導入が決まりました。そこで、タイピストの研修ということになったのですが、日本IBMの人が驚愕していました。何と、当時三菱商事のタイピストルームには何十人という英文タイピストが居て、それも年功序列で管理されていたのです。新しい機械を最初に使うのは大先輩なのです。50歳をはるかに越えたお婆さん(失礼)の英文タイピストの存在も驚きですが、もっとも新型に苦手な方たちをまず研修せねばならない事態に驚いていましたね。

道具の話しになるとつい熱が入ってしまいます。これも自動車輸出物語ということに
させて下さい。

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