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1記載日付:2000年8月23日
ライター:鈴木富司
番号:000-0005
タイトル:工場の敷地調査に関する指令は
「馬鹿いってんじゃないよ」の世界
戦後初の組み立て工場建設は今思い出しても笑ってしまいます。タイ国に出張を命ぜられ何もかも判らない状況で敷地についての調査を行いました。本社経由で、いすゞの重役さんから電報が届くわけです。一番問題になったのは、地盤でした。軍に行って戦車が走るときの情報があるから集めろとのいうのもありました。これは結局、周りでくい打ちをしている実態を調査したり、他の類似建物の図面を
見せて貰ったりして対処しました。何しろ15メートルのコンクリ杭をロープで引っ張るだけで埋まってしまう軟弱地盤でしたから私自身もびっくりして、写真を撮りまくりました。あるとき、変圧器は12000ボルトから直接220ボルトに落とすのだと報告したら、えらく叱られましてね。何をそんな調査をしているのだと。途中でもう一段階落とすトランスがあるものなのだというのです。しかし、現場でどう電線をたどっても12000と書いた柱上のトランスより工場に直接配線してあるし、途中にトランスはないのです。役所に行って聞いても、そうだというのです。しかし、どうしても日本側が信用をしてくれないので、再度お役所に頼んで、そのトランスの仕様書を見せて貰いました。そうしたら、なんと三菱電機製の図面や見積書まで出てきたのです。それも、三菱商事が輸出をしてバンコック支店が扱っていたのです。その型番を役人さんに笑われながら、写してきて意気揚々と報告書を書きました。国内の規格と違って輸出用ではそういうのがあったのですね。日本では常識でも海外では常識ではないのです。規制緩和をしたら、ここいらへんも変わるのでしょうね。
建設会社の調査では笑ってしまいました。例によって親分の中村敬止駐在員に相談したら、建築会社と名乗る会社に対して、タイで一番大きな建設会社を5社挙げろと聞きなさい。それを表にしてごらんというのです。そうしたら、
クリスチャンニールセンという北欧の会社の名前は書くが、あとは自分のところ以外すべて違う会社名なのです。確か、ブーンバニット社が2票とったかな。要するに1社以外は弱小なのです。東京には例によって資本金とか会社概要を報告しなければいけないのですが、そんな報告書を書けるような会社ではないのです。何しろ、土地整備の概算見積を依頼したら、汚いメモに縦書きで一金○○と書いてきた元日本兵のおじさんがやっていた建設会社もあったのです。1962年の10月から11月の入社3年生の懐かしい忘れられない物語です。